安城高等女学校には、講堂の南吉ピアノとは別に、もう一台のピアノが音楽室にありました。こちらも古めかしい雰囲気のアップライトピアノで、横浜中華街で創業した「周ピアノ」の製作です。ルノワールの名画「ピアノに寄る少女たち」に描かれているような燭台(ロウソク立て)のついたピアノです。安城市内の個人宅に保管されていましたが、横浜山手中華学校に引き取られ、修復されました。このピアノが特別展「南吉が安城にいた頃」を開催する安城市歴史博物館へ貸し出されたのが2013年でした。この時にはオープニングも含め何度かコンサートが開かれ、古いピアノが修理して蘇ることを、多くの安城市民が目の当たりにしました。南吉ピアノを修理することが決まるのはこの年のうちでした。このピアノの里帰りこそ、南吉ピアノ復活の原点だったといえます。それにしても、女学校にあった2台のピアノが、それぞれ修復されてともに現存するのは、不思議なめぐりあわせとしか言いようがありません。
SromashkA
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